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モップで作った着ぐるみみたいな犬――コモンドール

この記事の目次

コモンドール、もしくはコモンドル。
おそらく、よほどの犬好きでもない限り、見たこともなければ聞いたこともない犬種ではないでしょうか。

コモンドールの最大の特徴といえば、その特異な見た目。
まるで巨大なモップが歩いているとしか思えない風貌をしているのです。
しかも、色味までがいい感じに使い込んだモップとよく似ているんですよね。
そんなモップにそっくりのコモンドールですが、その中身はといえば、実はかなり骨太の作業犬(使役犬)です。

コモンドールの歴史と誕生の背景

コモンドールの原産国は中央ヨーロッパのハンガリーです。
生い立ちそのものの詳細について、はっきりしたことは不明ですが、かなり古くから存在している犬。
コモンドールという名前でこの犬種を表わすようになったのは1544年のことですが、それよりも前から存在していることが確認されています。

基本的にはイタリアを原産としているベルガマスコ・シェパード・ドッグや、同じくイタリアを原産としているマレンマ・シープドッグなどを作出の基礎にしていると推察されています。
コモンドール作出の目的は、羊を狼や泥棒から守るための護蓄犬。
最大の特徴ともいえる「のれん」のようなモップ風の被毛は、羊に似せることで群れに紛れ込ませるためのものなんですね。

また、トップコート、ミドルコート、アンダーコートの三層構造を持つ被毛は、狼などの牙から体を守るためのもの。
さらには北海道と緯度が近いハンガリーの気候の中で、羊を守るために1年のほとんどを屋外で過ごすための防寒の役割を担っています。

羊と見間違うほどモコモコとしたモップ状の被毛は、決して面白い見た目の犬を作ろうとして出来上がったものではありません。
あくまでも実用的な被毛だったのです。

とは言え、現代においてのコモンドールは、本来の作業犬としての役割はあまり担っていません。
いまも本来の役目である護蓄犬としてコモンドールを使っているのは、原産国であるハンガリーとアメリカの一部といったところのようです。
それ以外では、すっかりショードッグとしてお馴染みになってしまいました。

コモンドールの外見的特徴

コモンドールは大型犬です。
ジャパンケネルクラブ(JKC)が規定している標準サイズは

  • オス 体高/最低70cm 体重/50~60kg
  • メス 体高/最低65cm 体重/40~50kg

そして毛色はアイボリーのみです。

コモンドールは被毛があまりにもモコモコしているので、ぱっと見だけでは本来の体型がほとんどわかりません。
実際のところ胴体は長めで太く、四肢は胴体に比べて短めです。
そして護蓄犬にふさわしく、体は筋肉質で骨太。
しかし顔立ちは意外に可愛らしくて、マズルはやや短めであり、垂れ耳で目はアーモンド型です。

コモンドールの着ぐるみのような被毛をすべて刈り取ったとすると、どことなくイエローのラブラドールに近い姿になるんですよね。
反対に言えば、ちょっと短足ぎみで小太りのラブラドールに全身モップのかぶりものをさせると、コモンドールが出来上がります。

コモンドールはお手入れが大変!

そんなにもモコモコの被毛をしているなら、毎日ブラッシングで大変だろうな……、と思われがちですが、実はブラッシングはほとんど必要ありません。
と言うより、ブラッシングをしてしまうと縄のれん状に巻いている被毛がほどけてしまうため、ブラッシングできないのです。

そして被毛は捻れているがゆえに抜け毛の落下はあまり多くないのですが、それは単に抜け毛がからまっているから落ちないだけで、抜け毛がないわけではありません。
さらにはモップ状の毛はゴミがからまりやすく、モップと同様に汚れを拭き取るように付着させていきます。
そのため清潔さを保つためにはシャンプーが必要なわけですが、洗うのは一苦労。
縄状の被毛がほどけないように一房ずつ丁寧にシャンプーをしたら、これまた一房ずつ丁寧に乾燥させなければいけないのです。
シャンプーのすすぎや乾燥を手抜きしてしまうと、湿り気のせいで皮膚に炎症を起こしやすくなるため、しっかりと乾かさなければなりません。
こういったお手入れの大変さを考えると、一般家庭むきの犬ではない、と言えるのではないでしょうか。

コモンドールを飼いたいと思ったら

JKCにコモンドールの登録があったのは直近で2006年に2匹だけ。
それ以降2017年までは登録がありませんし、1999年までさかのぼっても登録数はゼロです。

それだけ登録数のない犬種である以上、ペットショップで販売されることはありませんし、日本国内でブリーダーを探すのも困難。
つまりは、外国のブリーダーとコンタクトをとるしか方法はないわけですね。
無事に海外のブリーダーと渡りをつけられたとしても、子犬の購入費用に加えて輸送費用が必要となります。
結果として、子犬の値段は100万円前後を覚悟しなければいけなくなるでしょう。
しかも、それはオスの値段であり、メスなら200万円近くになる可能性も。

いずれにしても、コモンドールを飼うとしたら莫大な費用にプラスして、しっかりと運動をさせることができる環境、さらには被毛の手入れのための労力が必要になるのです。