レプトスピラは身近にある感染症
犬の感染症といえば、真っ先に思い浮かぶのがパルボウィルスとジステンバー。
この二つは感染によって重篤な症状を引き起こす可能性のある、とても厄介なウィルスです。
だからこそ、たいていの混合ワクチンは、この二つのウィルスに対応しています。
つまり、定期的に混合ワクチンの接種を受けさせていれば、ある程度の予防は可能な感染症とも言えるのではないでしょうか。
逆に厄介なのはレプトスピラ細菌による感染症。
こちらは7種以上の混合ワクチンから対応しているウィルスで、一口にレプトスピラといっても日本国内で確認されているだけで7~8種類。
つまり、ワクチンを接種していてもまったく対応できないこともあるのです。
レプトスピラの感染経路
レプトスピラ症とは、病原性レプトスピラ菌に感染することで発症する病気です。
原因となる菌のスタート地点の多くは、なんとドブネズミの腎臓。
ネズミ自体は保菌のみで、レプトスピラに感染してもレプトスピラ症を発症することはありません。
そんなネズミの尿や死骸などが川や池の水、水たまり、土壌、食べ物などを汚染し、そこに接触することで感染してしまうのです。
タヌキやイノシシなども保菌のみで発症することはなく、ネズミと同様に感染源になることがあります。
そして厄介なことに、レプトスピラ症はほとんどの哺乳類が感染する人畜共通感染症(ズーノーシス)。
つまり、犬だけではなく人間にも感染します。
レプトスピラの症状
レプトスピラは感染しても、症状が現れないまま治癒する場合もあります。
しかし、だからといって安心なわけではありません。
症状はでなくても長期にわたって尿とともに菌を排泄してしまうため、知らない間に感染源となっている可能性があるのです。
感染した犬に症状は出なくても、飼い主である人間や他のペットには症状が出ることもありえるわけですね。
多頭飼育の場合は1匹が感染することにより、全匹が感染してもおかしくありません。
もちろん、飼い主共々です。
そんなレプトスピラ症の症状に多くみられるのは、レプトスピラ・カニコーラ(イヌ型レプトスピラ)という種類の菌に感染した場合は
- 40度を超えるような高熱
- 食欲不振
- 結膜の充血や鼻血
- 嘔吐や吐血
- 血尿や血便
レプトスピラ・へクテロヘモラジー(黄疸出血性レプトスピラ)という種類の菌に感染した場合は
- 黄疸
- 嘔吐や下痢
- 口の粘膜からの出血
カニコーラに感染した場合も重症化すると脱水や尿毒症によって死亡率が高くなりますが、へクテロヘモラジーのほうがさらに深刻。
症状が重症化しやすく、発症後数時間から数日という短い期間で死に至ることがあります。
台風や大雨のあとはレプトスピラに感染しやすい
台風や大雨などのあとは、レプトスピラ症の危険性が高まります。
なぜなら大雨のせいで汚染された土壌が河川に流れこみ、ネズミの死骸が水没しやすくなるからです。
雨があがった後、子どもが楽しく水たまりで遊んでいたら皮膚を通して感染することもありますし、犬などは土や水をなめることにより、経口感染するかもしれません。
うちの近所には川も池もないから安心・・・などと楽観するのは大間違い!
なんと都心にある花壇の土からもレプトスピラ菌は発見されているのです。
アウトドアで遊ばせるならレプトスピラ対応の混合ワクチンは必須
愛犬を連れてアウトドアに出かけるのは、犬と暮らす醍醐味の一つでもありますよね。
しかし、川遊びや山歩きをさせるなら、混合ワクチンの接種は欠かせません。
6種までのワクチンではレプトスピラに対応していないため、少なくとも7種以上を接種しておく必要があります。
7種混合ワクチンなら2種類のレプトスピラに対応していますし、9種混合ワクチンなら3種類、10種混合ワクチンなら4種類、11種混合ワクチンなら5種類に対応しています。
ひんぱんにアウトドアに連れ出すなら、11種混合ワクチンを接種しておきたいところですが、必ずしもかかりつけの動物病院が11種に対応してくれるとは限りません。
また、費用も割高になり、さらにはアレルギー反応の可能性が高くなることも視野に入れておくべきです。
不衛生な場所には近づかないのが一番
レプトスピラ菌は半年以上、土中や水中で生存できる生命力の強い菌です。
悪天候のあとはいつも以上に不衛生な場所には近づかないことが、結局は一番の予防法といえるのかもしれません。
愛犬には定期的にレプトスピラに対応した混合ワクチンを接種し、飼い主は土いじりをするならゴム手袋の着用、こまめな手洗いを実行するようにしましょう。
もちろん、水たまりに入るのはやめておくべきです。
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